阿羅本景infomations

小説家・シナリオライター・漫画原作の阿羅本の告知系BLOGになります

『碓氷と彼女とロクサンの。』キャラクターの話 その1 浅間夏綺


碓氷と彼女とロクサンの。 (ファミ通文庫)

碓氷と彼女とロクサンの。 (ファミ通文庫)

 発売から一ヶ月が経過しまして、今月初頭から明日までニコニコカドカワフェア2015の適応になっていて電子書籍版がお安く……という更新のネタがあったのですが、グルコミとかに参加していたものでblogの方で告知を忘れておりました……おはずかしや。


 あ、グルコミの方は盛況でなによりでございました。もっぱらお客さんにビールを飲ませてませて同人誌を売ってましたが、これはこれで楽しいものでした。


 で、そろそろネタバレっぽいことを私が話しても良い頃合いかなぁ……と思いましたので、作中キャラクターのコトについてちょいちょい作者の方からお話してみたいなー、と思います。
 これでしばらく更新のネタを稼げれば良いなぁ、ということで(笑)


 まずは万人が認める本編のヒロイン、なつきちこと浅間夏綺のお話から。
 明朗快活で影のない陽性な魅力の持ち主である彼女は読者の皆様にも好感を持って頂いたらしく、「なつきち可愛い!」というご感想を頂いたようで、彼女の生みの親としてはうれしいかぎりであります。
 で、そんななつきちに関してはかなり明確に原型、といえるキャラがいます。ただ、アニメなどの超有名なキャラクターではないので、原型が彼女でしょう? という指摘は私をよーく知ってる人からでも出なかったものでした。
 で、誰かというと……


 PULLTOPの2006年の美少女ゲーム『遙かに仰ぎ麗しの』相沢美綺ですね。このゲームは「美少女ゲームアワード2007」大賞受賞も獲得したので、ご存じの方も少なくないかと……ああでも九年前のゲームになるのですか、おおう。
 「かにしの」というニックネームのあったこのゲーム、私は同人誌を作ってたどころかコスプレ衣装を作ってモデルさんに来て貰って撮影していたほど好きでして……その中でも最愛だったのが、ヒロインらしく割とめんどくさい女の子が多い中で天真爛漫で明朗快活、好奇心が強く希望に向かってまっすぐに進む賢い彼女だったのです。
 で、『碓氷と彼女とロクサンの。』を書くに当たって、メインヒロインはめんどくささが少なくて誰からも好かれる娘に、というか阿羅本が書いていて一番楽しい女の子にしよう! ということで、みさきちこと相沢美綺をベースの骨格にして、鉄道への熱意や夢などを盛り込んだキャラクターとして作り上げたのでした。
 名字の「浅間」は碓氷を通っていた特急「あさま」から。夏綺という名前もみさきちから一字を受け継ぐ形で、陽気で強いイメージの名前、ということで夏綺、という名前になりました。
 なもんで、当然? のことならニックネームはなつきちに。

 夏綺のキャラクター描写に関しては、みさきちをある程度ベンチマークとしてからっと明るい女の子として書いていたのですが、作者として在る瞬間に「あ、このキャラは原型から独立したオリジナルのキャラクターになった」と思ったシーンがありました。
 それが、碓氷のEF63の運転席で、初めて人命を掛けて機関車を運転するときに『恐い』と思って震え出す彼女のシーンです。みさきちはこういう心の弱さのないキャラクターなのですが、夏綺は違ったんですね。
 ……そもそもプロット上には、夏綺が震え出すシーンってなかったのです。ですが、碓氷鉄道文化むらの取材で鬼軍曹こと佐藤さんが機関士としての大事な事は、人の命を預かる責務を感じることだ、という話を聞いたことを思い出し、夏綺は真面目でもあるから絶対その話を無視できない、そして「まーいっかぁ!」と言うほど馬鹿でもない、となるとここで恐い、と思わないとおかしい……と思って、あの運転席のシーンが生まれたのでした。
 こういうベースとなったキャラクターから乖離した行動を取るときに、キャラブレではなく命を持って動き出した、と思えたもので。

 ――そして、このシーンがあったために「夢を持つヒロイン」「それに憧れる主人公」という、なんかオーソドックスなライトノベル的方法論からしてみると立場がひっくり返っていたような二人の関係が、「夢を持つ主人公」「主人公に励まされるヒロイン」という真っ当なものになり、真ちゃんが最後の最後でようやく主人公らしくなれたという収穫もあったりもして……女装してましたけど!

 
 あと、なんで彼女が車酔いする体質かというと……夏綺って弱みらしい弱みがないんですよね、パーフェクトに強い女の子なので。だから電車の運転手として一番困った弱点をくっつけよう、と思ったのでした。
 それと、熊ノ平で温泉に入れよう→それまでに汗でムレムレにしておかなきゃ→それならかまめっしーの中に入れよう!→だと、車酔いするから真の代わりにPVの主演女優できないって理由も付けないと、ということで車酔い路線が推進されたのでした
  というか、弱点を盛られるっていうのはヒロインのあり方ではなく、ヒーローの作られ方だなぁと……うん、夏綺ってヒーロー属性強いからなぁ……

 いろいろと誕生までに紆余曲折のあったキャラクターですが、夏綺は作者としても非常に魅力的に動いてくれた、と愛着を感じているヒロインであります。
 彼女の事をもっといろいろ、読者さんと一緒に見ていけたらなぁ、と思っておりますので、ご声援をよろしくおねがいします!