鉄道雑誌の古参株、『鉄道ファン』の公式サイトにて『碓氷と彼女とロクサンの。』をご紹介いただいております!
……うむ、鉄道の記事エントリーの間にバーニア600先生のイラストが入っているとすごいというか……でも、こうやって取り上げていただくのはありがたい限りでございます。
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紙の本も買ってもらえると作者は狂喜乱舞しますので、こちらもよろしくお願いします!
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さて、この更新を楽しみにしていただける読者の方が多いとうれしいのですが……今回はシェルパ部の女性ヒロイン陣が終わってしまったので、とうとう彼の紹介になります……はい、本編の主人公である、志賀真くん(きゅん?)でありますよー!
メインキャラクターの中で、設定レベルではなく執筆レベルにおいて恐ろしく手間を掛けさせてくれたのが真であり、なんだかんだで彼が一番作者を悩ませてくれたものでございます。
本来、こういう女の子部活もののでは女の子を主人公にした方が無難だと思っていたのも事実です。実際、しぇるぱ部に加わるのであれば、鉄道は知らないけど生き生きとしたクラスメイトのなつきちに見せられた女の子が、しぇるぱ部に巻き込まれていろいろなものを学び、友情をはぐくみ、苦難に立ち向かっていく、友情の百合の物語……うむ尊い。
マンガとか、アニメとかだったらここは絵面からも考えてここは女の子主人公にしていたものと思いますが、ライトノベルというジャンルではいかんせん、男主人公でないと読者がピンと来ないという情勢があります(女主人公、居ないわけじゃないんですけどね)。そこで主人公はあくまで男子で、学生であるべきでだ……という形式上の要望があったのですね。
女子オンリーの部活に男子を、それも顧問やコーチではなく学生として入れると思うとどうするのか……そこで思いついたのは『そうだ、女装が似合う美少年にしよう』という……安易な、ですが女子学院潜入物などで、すっかり曲ネタではなく世のスタンダードになった男の娘も出来る美少年……という、一番の彼らしい? 特徴が出来上がったのでした。
さすがにTS(トランスセクシャル)にまではしなかったんですが……いやでも、みんな美少年が女装させられて辱められるシーンって好きでしょ? 俺も好きだし!
もう一つは、主人公に求めていたのは「あまり鉄道に詳しくないこと」でした。
碓氷峠とEF63はそれはもー、鉄道というマニアックジャンルの中でも11kmの区間に国鉄鉄道史を煮詰めたような濃い知識が固まっており、なにしろ専用補助機関車があったぐらいですので、ここで主人公を鉄道マニアにしてしまうと、もう限りなく延々とロクサンと碓氷のすばらしさを語り出し、お話が進まねえ! と言うことになりかねません。
それに、そんな詳しかったらなつきちに巻き込まれる形ではなく、何とか恣意的にしてしぇるぱ部に加わろうとしますし、なつきちの役目を食ってしまうことは考えられますので。
読者の人で鉄道に詳しくない人も多いでしょうし、なにしろ作者が鉄道の知識が深いとは言い難いので、ここは読者と作者と真がだいたい同じくらいの「鉄道をよく分からない」スタンスで、しぇるぱ部のみんなに碓氷とロクサンのことを教えてもらおう、という構造をとる
……そうしないと、地の文でロクサンや碓氷のことを延々語り続けることになって、それって読者にとってすごくうざったく感じますからねぇ……こういう長すぎる(作者しか楽しくない)設定語りを阿羅本は「ホビット庄の歴史」と言って警戒しております。
ええ、もちろん『指輪物語』の冒頭で、少なからぬ読者の意欲を挫く元となったと言われている、トールキン教授のアレですねアレ。
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もしあり得たかもしれないもう一つの『碓氷と彼女とロクサンの。』は、真が鉄道に詳しい主人公にしていた場合の展開ですね。
そうなると女子だけしか入れないしぇるぱ部に、EF63を運転したいので入ろうと焦がれ、ついに禁断の女装に手を出し『真ちゃん』になってしぇるぱ部に入るものの、しぇるぱ部の中でバレないようにどきどき緊迫の男の娘ライフと、学校では男子生徒として真とつきあう二重生活に楽しく苦しむ……と。
――あれ、これもアリだったかもしれないなぁ……でも、真と読者の間の知識のギャップが大きくなり、そこを(知識の量に限界のある)作者が追っかけて地の文で解説してまわるので、読みづらくなった可能性はわりとあるか……うむ。それと、なつきちやみすずの役割が少し弱くなってしまうのもちょい、よくないかなぁと。
そんなこんなで、真の基本骨格要素が出来上がったのでした。他に、この作品のこの主人公や、こんなキャラのモデルが! というのは特に作者として無かったと思います。
名前は碓氷峠を通った特急『志賀』から。名前は男女どっちでも違和感のない名前……ということで真という、オーソドックスな感じでネーミングをしたのでした。まこっちゃんですね、ええ。
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……ですが、真はほんとーに書くのを苦労しました。
そもそもしぇるぱ部に誘われて(男のなのに)入る、というの取っ掛かりのシチュエーションが受け身であり、碓氷やロクサンに詳しいわけでもないので部に入ろうというモチベーションも高くない。さらに、葵という強烈な圧力の姉がいて性格的に鬱屈しがちなのに、そもそもなつきちと巡り会うためのアルバイトをしようとするのか、という理由が、ない。
と、合理的に考えていくと真は物語に参加できないキャラクターであり「なんとなく」で存在する主人公なので、これを通して読者にお話を見てもらうのはストレスが高く、「おもしろくない!」と放り出される可能性が高いのです。
ヒロインが生き生きとしていればライトノベルはなんとかなる……のですが、それは主人公がダイコン役者でない時に初めて言える話であります。
初期稿の真はとにかく「なぜしぇるぱ部にいるのか、活動を続けようとするのか」の意欲が不明確であり、なんとなくお話が盛り上がらないまま、初期の原稿は進んでいたのです。
夏綺の矢ヶ崎踏切のシーンで、嫌でも各個のキャラクター達は息吹を吹き込まれて動き出すという事は分かっていたのですが、そこまでに真に確固たる動機がないと、お話が続かない。まず遭遇の切っ掛けである、バイトをしようとする動機をそもそも作らないとだめじゃないの、と。
そんな真を助けてくれたのは、ヒロインの夏綺であったりします。
彼女は確固とした夢がある。じゃぁその相手となる真は夢がない少年――夢を持って身を焦がすことにあこがれる少年にすればいいのではないのか? 人が夢を持つ事にリスペクトを抱き、自分もそう仰がれるたいと思っている少年、という造形を盛り込んだのでした。
こうすれば、夏綺に惹かれてしぇるぱ部に入るのに「夏綺がかわいい女子だから」以上の動機が生まれる。それに、自分が夢のない少年であることに恥じ、姉の影響から離れて自分探しの旅をするための旅費を稼ごうとしている……という、初期の条件を生める。
で、なつきちに引っ張られてばかりでは主人公たれないので、夏綺は彼女は彼女で夢も持つなりに人に言えないコンプレックスがあり、それゆえに作る心の壁を真が乗り越える試練があり、それに挑む動機を「夢を持つ人へのリスペクト」で生むことが出来る……そういう「主人公となる試練」を、夏綺をバカにする先輩にたいして反論する真、というシーンでつなげていくことができるようになったのでした。
なつきちあっての真であり、そういう意味でもお前らもう結婚しちゃえ、って感じであります、ハダカを見せあったカップルなので(笑)
そんな受け身の主人公の真ですが、7章では主人公らしくヒロイン達を救う選択を選び、くじけそうになった夏綺を、励まして勇気を与えるほどに立派なオトコノコほどに育ってくれました。
いやぁ、ラブいなぁ……ラブコメだなぁ……ライトノベルだなぁ……みんなあそこで、熱い! と感じてくれるとうれしいと作者は思っております。
難産でしたが、いろいろな苦難の末に立派な主人公になってくれたのではないのかと思います。それに女装して辱められる美少年は書いてて楽しいしね! 作者が主に! みんなも呼んでて楽しかったはずだ、わぁい!(笑)
そんな真ちゃんですが、みなさまに愛していただけると作者としてもうれいです。
次は……まぁ、葵姉さんですかね……佐原教官も一緒かな?(笑)