去る者は日々に疎しというが
碓氷の主の姿は記憶の中で常に若く在る
汽笛の音が碓氷に絶えて早幾歳――
と、言うわけで『碓氷と彼女とロクサンの。』の帯にもあったように、9月30日は18年前の信越本線横川駅−軽井沢駅間廃止の日であり、EF63の最後のお勤めの日でありました
その頃阿羅本はそーんなに鉄道の興味がある人ではなかったので、ちらっとだけニュースで見た記憶はあるのですが……鉄道に詳しい(それも関東近郊の)人はそれぞれが「この夜にどこで何をしていたのか?」だけで軽く半日話し合えるという、運命の日であるようです。
その時の模様が、Youtebeにも沢山上がってますので、しぇるぱ部と同年代or私と同じように鉄道に興味があまりなかった人はこの辺をご覧頂けると、伝説の夜のコトがおわかりになるのかも、と……。
……これでしぇるぱ部も高校三年生&大学一年生が入れるようになったのですが、が、まぁ当面は明日香と朱鷺音の二年生組が最上級ということでお話を進めていければなぁ、と思っております。
奇しくもこの月末から碓氷峠鉄道文化むらのEF63体験運転も、路線補修が行われるために春まで休業ということで、秋の碓氷は少し寂しい感じがします。
ですが4月に体験運転は再開しますし、『碓氷と彼女とロクサンの。』もそれぞれの夢に向かって進み、ロクサンがまた動き出す日が来るものと、作者の私も信じております。
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あーさて、なにか記念の小咄を……そうですね、この作品を発売する前に、「この辺が読者さんにつっこまれんじゃないのかなー」と思いながらドキドキしてたところのお話でもしようかなぁ、と。
まず現状の碓氷峠と作中の碓氷峠はわりとその、交通状況諸々が違うこと。
なにしろ今は遊歩道となっている碓氷の旧線にトロッコ列車が走って熊ノ平まで行ける様になってますから……あと、今の峠の湯のトロッコ駅が温泉街になってるとかですね、ええ。
これは、全くリアルな碓氷の現状だと「……これ割と観光用にしてもどうしようもならないんじゃないの?」的に寂しいので、こそこそっと設定で盛った部分であります。で、熊の平に温泉を! というのはバーニア600さんのアイデアでした、秘湯・霧積温泉みたいな感じで、と。
この辺「そんなものあったか?」という感想もちらちら拝見しましたが、割と皆さんスルーしてくれてほっとしております。いや、ほっとしちゃダメなのかこれ(笑)
他に気にしていたことは「動力車操縦者免許を持ってない学生が機関車を運転するだなんて!」というリアリティ重視の方の苦言……だったのですが、これは碓氷峠鉄道文化むら、という一般客向けの体験運転をすでにやってる施設と路線を舞台に置いたので、ギャップが少なかったものかと。
多分他の鉄道、たとえば砂利トロッコ西武多摩川線とか盲腸流山電鉄とか濡れ煎屋銚子鉄道で同じ事やったら「これいいの? 本当に? 違法や脱法なんじゃないの」と言われてると思います。多摩川線でさえも! 多摩川線でさえも! あ、でも大井川鉄道だったらみんなナチュラルに受け入れられたような気がする……な。
あと鉄道ラノベの大人気シリーズである『Railwars!』(豊田巧/バーニア600)3巻とクライマックスの場所と状況が被ってない? という……うん、両方とも碓氷峠の嵐ですからね、ええ。
プロット作る時に「なんかRailwarsの三巻と状況似てますねぇ」と私がおそるおそる水を向けたのですが、バーニア600さんが「でも3巻では俺が愛していたロクサンがウヤで出なかったし! 出なかったし! ロクサン動かすためならなんでもいいですよ俺は気にしませんよ!」とおっしゃっていたので、覚悟を決めたのであります。
まぁ、山の中だしね、嵐になっても仕方ないね!
読者の方でRailwars読者や、アニメの方も目にされた方も多かっただろうと思うのですが、これがパクりだとか言われなかったは……あちらは軌道自転車改でダウンヒル、こちらはEF63+169系でヒルクライムだったので、違うものと認識されたのかなぁ……と。
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そして、著者稿の時に「やべぇ……これはもう修正が効かない、読者がスルーしてくれることを祈るしかない」と思って真っ青になったのは、これ。51ページの挿絵。
なんで机の上にラジオカセットレコーダーじゃなくて、分離式のステレオコンポーネントをテーブルの上に持ち込んでるんですかね、みすずサン。
こ、これは私がラジカセのつもりで「コンポ」と書いたのを、バーニアさんがステレオコンポーネントの挿絵を描き、ラフの段階で私が自分の間違いに気がつかずにGOを出し、著者稿の時になって挿絵のデータと付き合わせてみて「……あ!」と気がついたという……わ、悪いのは私です。ここを突っ込まれたらセプーク祭りでもしようかと思ってました。
え? 編集さんにも黙ってましたよこのことは。イラスト完成していたので差し戻しもできませんし。で……
だけど今まで一回も突っ込まれなかったぞ! やった、私の勝ちだ!(そういうもんかw)
あと、書いてる最中にあれこれ問題になって直したところ? としては「佐原教官などの大人機関士として乗り込まないのはおかしいから、どうやって乗らない理由を付けるか」に作者/編集/バーニアさん/鉄道顧問団の意見が割れてあれこれ大変だったところとか、EF63が碓氷を下れなくなる理由が初稿では技術的に間違っていて、監修を受けて完全改訂した、とかですかね……ここ、技術的な理由付けがめんどくさすぎて読者が全く付いてこないんじゃないのか、とか心配したのですが。
あと、治男にまこっちゃんがキスされそうになるシーンとかありましたが、ざっくりカット! よかったね真ちゃん、なつきちが安心するよ!(笑)
……とまぁ、作者は発売日前にはいろいろ不安に思っていたのですが、思いの外に発売後に皆様がこの作品を受け入れてくれて、いろいろと好意的な感想をいただいたので、非常にありがたい限りであります。
『碓氷と彼女とロクサンの。』(ファミ通文庫 阿羅本 景/バーニア600)インプレッション
それでは今後とも、『碓氷と彼女とロクサンの。』をよろしくお願いします!