阿羅本景infomations

小説家・シナリオライター・漫画原作の阿羅本の告知系BLOGになります

なぜなにフールズフィスト(8) 裁定執行人と闘儀協議会、Q&A

 さて、今週が『フールズフィスト』の発売日であり、緊張に堪えきれなくなった阿羅本が豪雨の中「……ちょっと書店の様子を見てくる」とか、用水路を見にいくおじいちゃんのようなフラグ発言をしそうなマインド的に不安な有様ではあります。
 が、そんなこんなでツイッターなどで寄せられた質問から、『フールズフィスト』のある役割を持つ人物と組織に関して『なぜなにフールズフィスト』第八回としてお話ししたいかと思います〜。


フールズフィスト (集英社スーパーダッシュ文庫)

フールズフィスト (集英社スーパーダッシュ文庫)

 ツイッターである方から『フールズフィストは現代社会のお話なのですか?』という質問を頂きました。
 あー……えーっと、表紙は鎧と弓を持った雲英で、魔法による遺産闘争という説明を読むとファンタジー世界のお話にぱっと見見えなくもないですよね。主人公とかヒロイン回りの名前はおもいっきし日本人なのでおわかりのように、これは現代社会日本を舞台にしたお話になります。
 ただ、完全に現実と同じか? というとそうではなく、魔法に関する部分において、改変が多少入っております。

 ですがそこでもう一つ頂いたのは、『魔法のある現代とのことですが、法律周りとか教育周りはどうなってますか?』というご質問。
 つまり、科学技術と並立する形で魔法技術があり、生活の一端に取り入れられているか、何らかのライセンスや法律の形で使用が規制されて、その使用者育成ための教育機関がある……という、ライトノベルの1つの定番である「別世界の改変日本」を舞台にしたお話ではないのか? という質問かと思います。
 『フールズフィスト』に関しては、魔法の存在は一般人が知るところではありません。魔法はオカルト(秘匿された知識)としてある形です。その魔法を知る者が七幸家であり、魔法ゆえに成功を収め、その礎となる『ファウストの遺産』を巡って争うと共に、魔法と遺産、七姫騎闘儀を一般市民の目から隠しているのです。

 そのために存在する組織と役目が、裁定執行人闘儀協議会です。
 裁定執行人(エグゼキューター)は、七姫騎闘儀の審判・裁定を一任され、遺産継承を関して取り仕切る祖師ファウストの遺言執行人ともいうべき役割の者です。
 名前を「パラケルスス」という者がその役割を、初代の七姫騎闘儀から務めています。
 超常の力を用いて闘う七姫騎闘儀の〈姫〉〈騎士〉〈従者〉を時に制止し時に制裁するために、彼には『ファウストの遺産』の限定執行権が与えられているのです。その力の程は――これは読んでのお楽しみ。

 その裁定執行人によって招集された七幸家の代表者による、闘儀実行のための諸業務を行う機関が闘儀協議会(コミットメント)です。
 日本を牛耳るとまで言われる七幸家は、協議会によって連絡交換を行い、影響力を持つ各機関に働きかけて闘儀や魔法の隠蔽・被害の修復・外部からの介入の阻止、そして闘儀参加者が過度に外部に干渉すること(選定武装の力を使って犯罪を起こすとか)を防ぎ、最後の一人の姫を生き残るまでの闘儀遂行を貫徹することにあります。
 そのために、一般人は過去数度行われた闘儀に関しての事実を知らないのですが、そこから漏れた世の噂や都市伝説がある……という感じです。

 なので、「一般人とかの闖入は?」という質問がありましたが、それが起きないように極力努力しているMIB的な組織がある、ということで。もっとも巻き込まないのもムリですし、主人公の誠自体が、その(笑)
 


そのほかの質問としては――


・外部の人間使ったら卑怯扱いで自動負けなのか?

 たとえば数人の人間が銃火器武装して姫や騎士を襲撃しても、選定儀装で武装した戦士にはあっという間に返り討ちになります。
 なら戦車と戦闘機を持ち出して――とか大げさに闘争介入やり始める場合には、闘儀協議会がその動きを察知してその組みに中止を勧告、逆らえば他の家たちによって姫主従の連合攻撃を食らうか、裁定執行人が出て行ってその家と姫ごと制裁することになります。
 外部からの過度の介入は「自動的に負け」というより「やり過ぎると制裁されるし、やっても結果は得じゃないからあまりしない」という判断になります。まぁ、そこでの違反にならないレベルでの裏の掻き合いも『フールズフィスト』の妙味なのですが。
 もう一つ、七幸家以外の勢力が『ファウストの遺産』を狙って介入してきたときは、協議会が連合して介入勢力排除に働き出します。


・共同戦線による多対一とか、負けた時の処理は?

 七姫騎闘儀は「勝ち星が一番多い」姫の勝ちではなく、「一番最後まで生き残った」姫の勝ちなので、共同戦線を張ることは常套手段であり、負けた姫はエリミネートされて消えていくだけなので問題は特にありません。もっとも「最後まで生き残った」なので共同戦線はどのみち破綻するのですが……。
 負けたときの姫がどうなるか、というのは――ここで喋ってしまうと面白くないので、本編をご期待ください。


・最後まで逃げ続けたチームが有利だが、厭戦や避戦・逃走にはペナルティはあるのか?

 ありません。
 ひたすら逃げ続ける、あるいは屋敷に籠城して闘わないという消極的生存戦術もありなのですが、なかなかそうも行かない事情もあります。
 1つ目は、戦いに勝つ毎にその陣営は強化されていくある仕組みがあるので、最後まで逃げていると強大化した主従に最終的に対峙しなくてはいけなくなること。
 2つ目は、余りにも逃げ続ける行動が露骨であると反感を招き、他の家の姫主従によって共同の追跡網や攻城包囲陣が成り立ち、不利になること。
 3つ目は、すべての姫は一度全員が一同に会し、〈額冠〉を授かる受冠式という儀式があります。姫が誰であるのかが他所から分からない、ということならともかく顔と名前と正体が割れているのに逃げる、というのはなかなか難しいことです。そしてそれが属する七幸家は皆、財力も情報調査力もある富豪なので、逃げきれるものでもないものです。
 いずれ破綻する逃走や籠城に精力を傾けるよりは、有利な状況を引き寄せ「勝てる戦い」を作り上げていくのが七騎騎闘儀の王道であります。

 1つ逃げを完全に打つ手として「7人の姫が全員闘わないという同意を結び最後まで逃げ続ける」というのがあるのですが、莫大な力を持つ『ファウストの遺産』を前にするとそうも言ってられない、それぞれの願望や事情があるもので……。


 長々とお話してしまいましたが、今回の『なぜなにフールズフィスト』はこの辺で〜。おそらくこれが最終回だと思いますので、あとは『フールズフィスト』を直にお楽しみくださいませ〜。